印度尼西亜の面影~Kabar dari Indonesia~

インドネシア在住7年目。ジョグジャカルタ特別州のガジャマダ大学大学院所属のどまぐれモンによるブログです。インドネシアとは、文化とは社会とは。宗教とは。無駄に色々考えてます。

2019年インドネシア大統領選 写真グラフ②

前回に引き続き大統領選の様子を写真と共に紹介します。

実は偶然にも、ジョコウィ大統領が投票をする投票所が僕の宿泊していたホテルから歩いて直ぐとの情報を入手し、現場に潜り込んでジョコウィの写真を撮影することに成功しました。

5年前の大統領選も記者として、同じくジョコウィの投票する瞬間に立ち会いましたが、5年を跨ぎ、2回連続でジョコウィの投票現場にいた日本人も珍しいことでしょう。

なので5年前の2014年と今回の2019年のジョコウィの違いについて少し感じたことを書いて見ます。

(今回掲載する写真は全て僕が撮影した写真です)

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投票後にメディアに投票を済ませたアピールをするジョコウィ大統領

 大統領も投票します

インドネシアでは、大統領選の際も大統領候補者自身(今回の場合は現職のジョコウィ大統領と副大統領候補のマルフ・アミン、対抗馬のプラボウォとサンディアガ・ウノ)も投票します。

基本的な大統領候補の投票日の流れは、『投票⇨選対に移動・休憩⇨速報値での体勢判明⇨勝利/敗北宣言』となっています。

なので、メディアにとっては、投票時、選対での勝利/敗北宣言の2箇所が写真撮影の絶好のポイントとなっているわけです。

他方で、大統領候補者も一般市民が使う投票所で投票することになる訳で、混乱を少なくするために選対委員会もギリギリ(大体前日)までどの投票所が使われるかの情報規制をかけています。

前回の2014年大統領選でジョコウィが投票所として使ったのは、ジャカルタの閑静な高級住宅街として知られるメンテンにある公園でした。

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5年前の投票直後のジョコウィ

今年の投票所はガンビル

今年のジョコウィの投票所は、独立記念塔にほど近い、ガンビルの投票所でした。インドネシア語で投票所は、TPS(Tempat Pemungutan Suara)といい、住民の居住地区ごとに細かく投票所が指定されています。中には、一般民家の庭が投票所になったりします。

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ジョコウィが投票したTPS008

当日ジョコウィはジャカルタから車で1時間30分程度南にあるボゴール市大統領宮殿から出発。ニュース速報サイトのDetik.comで報道される出発時間、経過、到着時間を確認しつつ投票所に向かいました。

ホテルから歩いて7分ぐらいの場所でしたが、実は到着時にはジョコウィは既に到着済みで現場は厳重な警戒がされてました。

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現場のセキュリティ

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セキュリティゲートあるけど、例によって一応ありますといった感じ

現場はメディアで鮨詰め状態です。メディアにとっていい写真を撮るのは命でもあるので、基本的に譲り合いの精神がありつつも、場合によっては場所取りでガチンコの喧嘩が発生したりもします。僕は邪魔にならない程度に、入り込みます。

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現場はメディアでパンパン

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投票前に現場スタッフから投票方法について(便宜的に)説明を受けるジョコウィ

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メディアに向けて投票前に少しこのポーズを維持

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投票後はメディアから囲み取材を受けます

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投票所スタッフが出張ってきてセルフィーも受け付けます

5年前とは投票時の表情に変化も!?

これは完全に僕の主観ですが、5年前の投票時とは少し表情が違ったような気がします。下の写真の通り、5年前は、彗星のごとく現れた庶民の味方の大統領候補!といった感じで、親しみを持てるように笑顔が常に多かった印象です。

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5年前の投票後。笑顔全開でポージング

他方で、今回の投票後は笑顔は見せるものの、威厳含んだ笑顔でさすが5年間大統領をやられてきたんだなぁと感じました。

また事前予想でジョコウィ陣営の有利が報じられていた通り、かなり今回の選挙には自信を持っているんだろうなという雰囲気が表情から伝わってきました。メディアの質問にも、いつも通りジョークを交えつつも、はぐらかすとこははぐらかして、5年前のように割となんでもメディアに答える姿勢ではなく、あくまでジョコウィ主導で囲み取材も終わってました。

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威厳を感じさせながらも渋い表情のまま。

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笑顔も5年前のような前回の笑顔ではない気がした

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時折厳しい表情も見せていた

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帰りの車に乗り込むまでメディアの質問に答えていたが、かなり落ち着いた表情で厳しさを垣間見せていた様に思う

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固めの表情が多い印象


これらの表情は、『軍人、昔の大統領の子息、ムスリム指導者といった歴代の大統領とは違う(いわゆる)庶民派大統領候補としての2014年と、5年間の大統領としての経歴を積み、それらをアピールする現職大統領としての現在の違い』を立ち振る舞いとしても表しているのかなーーなんて勝手に感じていました。

現地で見るニュースの様子や、町の人々の様子も、2014年は大統領がジョコウィかプラボォどちらになるか分からない大決戦!といった雰囲気に反して、今回は割とジョコウィの再選が予定稿の様な雰囲気を感じました。

ただ現在公開されている速報値では、2014年と2019年の両陣営の投票パーセントはほぼ変わらない様です。こちらについても、色々な角度からブログネタとして見ていきたいです。

おまけ

バイクタクシー乗車中にたまたま通りかかった投票を呼びかけるウォールペイント。インドネシアでは、公共の壁に勝手にこう言うペイントがよく描かれるけど、どれもデザイン性が高いので目が行きます。

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たまたまバイクタクシーに乗ってる時に通りかかった投票を呼びかけるペインティング。

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デザイン性が高い。公共の壁に書いてるから違法だけど笑

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※このブログの内容/記事については個人の見解です。記事の内容は執筆者に帰属します。内容の一部を引用などされたい場合は、メール
でご一報ください。(kabar.dari.indonesia@gmail.com

 

 

 

 

2019年インドネシア大統領選 写真グラフ①

2019年4月に実施されたインドネシア大統領選。速報値(クイックカウント)では、現職のジョコウィ大統領がプロボウォ候補を退けて再選を確実にしています。

5年前の2014年の大統領選時も、現地新聞社の記者として大統領選を追いましたが、メガワティ元大統領の私邸で、ジョコウィ陣営の勝利宣言の場にいました。写真撮影もかなり頑張って他の日系メディアを上回る写真を撮影しました。

まだ入社間もなかったけど、現場で東南アジアの大国の大統領選を生で体感出来たのは、その後のインドネシアに対する自身の見方に少なく無い影響を与えていると思います。

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5年前の大統領選。メガワティ私邸でのジョコウィ陣営勝利宣言の図。

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勝利宣言の時、中央のいいポジションを確保したのでバッチし全国放送にも移りました笑

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中央の青いシャツが僕です。遠くスラウェシの友人からも問い合わせがあったシーンになりました



今は一時的に日本に帰国してますが、野暮用でジャカルタにちょうど滞在していたので、大統領選現場をいくつか歩き、写真に納めたので現場の雰囲気を紹介します。

(掲載している写真は全て僕が撮影したものです。)

 

 最後のジョコウィ陣営集会 

4月13日、ジョコウィ陣営は最後の決起集会をジャカルタ中心部のグオラ・ブンカルノ競技場(GBK)で行いました。

GBKの収容人数は公式には7万7千人程度とのことですが、今回の集会では客席は下から上まで、フィールド場や競技場街にも大勢の人が駆けつけてました。

GBK前に駅のあるMRTは混乱をきたして、閉鎖したとかしないとか。少なく見積もっても10万人はGBKに集まった計算になります。

この政治への熱気は日本では味わえないなぁ。

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決起集会を呼びかけるポスター(Instagramから)

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人で身動き取れないくらいパンパンのGBK

選挙キャンペーン最終日のこの日は、ジョコウィ陣営は大規模集会を実施し、その後GBK近くのホテルで開催された最後の正副大統領候補による討論会に参加しました。GBKでの熱気をそのまま持ち込んだように、討論会でもプラボウォ陣営に比べてより主張を投票者に伝えられていたように感じます。

GBKでの集会には僕も、当日めちゃ混んでいる道をぬって参加したので、以下写真で様子を紹介します。

 グオラ・ブンカルノ競技場周辺

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集結する支持者達。ジョコウィ所属の闘争民主党の服を着ている

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こんな風景もインドネシアならでは

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当日は交通規制が途中から敷かれてました

 

グオラ・ブンカルノ競技場敷地内

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お祭りの様なゲート

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会場周辺には入りきれない人用にスクリーンも設置

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政治がこちらの人にはイベント

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キャンペーンポスター。白シャツがジョコウィの戦略イメージ色

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イスラムへのアピールもしっかり

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入りきれない人用に外部モニター

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横断幕も多種多様

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GBKの外でも多くに人が集会開始を待ってました

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インスタ映え

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みんなお揃いのシャツ。これは僕も欲しかった

 

 グオラ・ブンカルノ競技場内部

GBKにはサッカーの試合観戦などで何回か来てるけど、こんなに人でパンパンなのは初めて見た。基本的にセキュリティーチェックがあるのみで、無料で入れました。

内部では通路まで人で溢れていたので、一番上の階層まで上がって、もみくちゃになりながら、ようやく全体が見渡せました。

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人でパンパンの会場。こんな光景初めて見た

 

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ジョコウィ登場を待ちわびる人たち

ジョコウィが登場すると会場の熱気は最高超になりました。(そりゃそうだ)

ジョコウィーーーーと叫ぶ兄ちゃんからおっさん、おばさま方。つくづくインドネシアは国民と政治(家)の距離が日本とは比べ物にならないぐらい近いなぁと感じました。

 そしてジョコウィの登場!!

登場シーンはスター歌手が登場した様な大歓声。演出も凝ってるし、まるでコンサートの様な雰囲気。

 

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登場の仕方がスターのそれ

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長時間待っていた観客大興奮

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一挙手一投足に大歓声

 

ちなみにこのジョコウィが立っている赤い台は上から見ると、ジョコウィ陣営の選挙登録ナンバーである1になっていた様です。その場では気がつかなかったけど。

citraindonesia.com

 

演説はいつも通り、今までの経済政策やインフラ政策の成果を特に集中して話していました。インフラは、ジョコウィ陣営が一番有権者に訴えることが出来る目に見える成果としてあらゆる形で、選挙期間中アピールが行われてました。

www.instagram.com

日本が事業参加しているMRTもしっかり選挙アピールに使われてます。

 

会場の熱気に当てられたのか、人並みに押されたからか、ジョコウィの演説中続々と体調不良と思われる人が、台の上から救出されていました。それぐらい熱気充満で危ないくらいでした。

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運ばれる急病?人

集会後はしっかりインスタ/ツイッターでもアピール。

 

政治が一大イベントなインドネシア

上記の写真の通り、政治、選挙(特に大統領選)は一大イベントなインドネシアの様子を少し垣間見れたのではないでしょうか。

日本は総理の直接投票制がないので、比較しにくい部分はあるにせよ、インドネシアでは政治と国民の距離が近い気がします。

家族のWhatsapp(Lineみたいなもん)のグループチャットで政治談義が行われたりするくらいで(それは必ずしもいい面ばかりでないけど)、日本はこの点に置いてはインドネシアより後方に位置している気がします。

一口に民主主義といっても、日本とアメリカの民主主義体制が違う様に、またインドネシアの民主主義を見る事は示唆に飛んだ無言のメッセージも受け取れる様な気がしました。

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集会後にポージングするおっちゃんは少しかっこ良くも見えた

※このブログの内容/記事については個人の見解であす。記事の内容は執筆者に帰属します。内容の一部を引用などされたい場合は、メールでご一報ください。(kabar.dari.indonesia@gmail.com
 

 

 

ジョグジャ伝説のソト屋「Warung Soto Kadipiro Asli」

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Soto ayam biasa

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伝説のソト!?

ジョグジャの 超老舗のソトアヤム屋さん。マリオボロ通りからも3キロ程度の程よい距離にある。市内に支店が何店舗かある模様だが、食べるなら本店ですね。

1921年オープンという独立前からジョグジャでソトを売っていたお店とのこと。昼下がりには、地元の人、観光客で一杯でした。

値段は割と高めで優しい味

ソト以外のメニューもあるけど、ほぼみんなソトを頼んでます。Kulit(皮)など鳥の部位も選べます。ソトはRp20,000程度。ジョグジャの相場を考えると少し高いけど、食べる価値あるかと。スープにご飯とキャベツなどが入っているジョグジャでよく食べられる形で提供されます。朝飯にちょうど良いかも。味も優しい味で2杯食べたくなりました。ジョグジャで観光の際には、是非一杯。

 

オススメ度:星7つ ★★★★★★★☆☆☆

住所:Kadipiro, Jl. Wates No.33, Sonosewu, Ngestiharjo, Kasihan, Bantul, Daerah Istimewa Yogyakarta

営業時間:毎日8am-14pm

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アジア大会開会式:大統領バイクパフォーマンスとインドネシア政治の潮流

第18回アジア競技大会ジャカルタパレンバンが8月18日、ジャカルタのブンカルノ競技場での開会式で幕を開けました。

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ぎりぎりまで開会式チケットが引き換えられなかったり、相変わらずの運営ではありましたが、開会式自体はかなりインドネシアの特色を出していて、内外から好評を得ています。その開会式で話題になっているジョコウィ大統領のバイクパフォーマンスを見て感じたことを中心に少々書きます。

 

サバンからメラウケまで

開会式のパフォーマンスは各島、各地域の文化を反映させた出し物が行われ、インドネシアの多様性を象徴するものになっています。

まさにインドネシアの多様性を象徴する「Dari Sabang sampai Merauke」(西端のアチェ州サバン島から東端のパプア州メラウケまで)という言葉を表すように、各地域の伝統的な舞踊や古い物語をもとにした芝居なども披露され、観る者をかなり楽しませてくれました。

以下の動画は、開会式の冒頭で疲労されたアチェの伝統的舞踊の「サマン(Saman)」です。

www.youtube.com

 

大統領がバイクで疾走!

そして、なんといっても今回目を引いたのがジョコウィ大統領がバイクに乗ってブンカルノ競技場まで入場(したようにみせた仕掛け)したことです!

Aksi Keren Presiden Joko Widodo Meriahkan Opening Ceremony Asian Games 2018 - YouTube

www.asahi.com

 

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ジャカルタから60㌔弱の南にある西ジャワ州ボゴール市の大統領宮殿を出発するジョコウィ大統領。

 

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大統領ご用達の警護に守られて出発

 

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しかし市内はアジア大会で盛り上がる市民で大混雑。

 

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すると警護車のバイクにすかさず乗り換え、渋滞もダイブでかわすジョコウィ大統領

 

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でも、学校前の横断歩道では子どもの歩行優先

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そしてブンカルノ競技場に到着して

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競技場内をぐるりと走行

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そして裏口にまわってからーの

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参列席に到着!

この仕掛けについてはメディアなどにも事前に情報が漏れないように最新の注意が払われていたようで、事前に大統領がこういったパフォーマンスを行うとは全然情報として出ていませんでした。

アジア大会の事前説明で、クリエイティブ・ディレクターのウィシュヌタマさんは開会式には「サプライズ」がある、とかたくなに内容を詳細に明かさなかった。約3万8千人の来場者や取材に臨んだメディア関係者らはおそらくその狙い通り、オートバイで登場したジョコ・ウィドド(ジョコウィ)大統領に度肝を抜かされた。(じゃかるた新聞2018年8月20日紙面)

 

大統領オートバイで登場 開会式 大自然と多様性が共存 | じゃかるた新聞

 

本当に大統領が乗車していたのか?

次の日の地元紙やネットメディアでは、ジョコウィ大統領のパフォーマンスに関する記事がかなり目立ちました。

このパフォーマンスはもちろん全てジョコウィ大統領がやったわけではないです。

その証拠にジョコウィ大統領の左手の指輪が、高速道路でバイクにまたがりヘルメットを被った瞬間になくなっているとの分析をしたネチズンも。

いや、よく探すはこういうの。

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実はこのパフォーマンス、タイ人のスタントマンを使って、8月上旬に撮影されたとの情報も出ています。

なぜタイの人だったかは謎ですが、スタントマンのインスタが発見されてその写真の構図が今回のパフォーマンスと同じだったとかなんとか。

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today.line.me

二輪車乗車がジョコウィ大統領のアイコン

実際にどこまで大統領が乗車していたのかは定かではないですが、ジョコウィ大統領は元々バイク好き(もっと言うとパンクロック好き)で有名です。

また同氏が政治家として、活躍を始めた中部ジャワ州ソロ市市長時代には、(バイクではないけど)自転車に乗って市内を散策しながら市民の声を聞く、庶民派市長として人気を博しました。

いわば二輪車にまたがることは、ジョコウィ大統領のアイコンでもあり、人気の秘訣といっても過言ではない側面があります。

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ソロ市長、ジャカルタ州知事、大統領と立場は変われど、政治的な動きなどがある時には事ある毎に自転車にまたがります。

 

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西ジャワ州スカブミ県を視察したときにも改造バイクで走行してメディアの話題を集めた

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英国製のRoyal enfield classicを購入した際もメディアを招待して記念写真

 

今回の開会式でのパフォーマンスはジョコウィ大統領の人柄を表しつつ、「僕達(インドネシア)の大統領イカスだろ!」という意識を国民が持てるようにしたよく出来た仕掛けだったなぁと感心しました。

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俺の大統領イカすぜ!というインスタの投稿

 このパフォーマンスについては、日本の友人からも筆者宛に「大統領がバイクに乗って登場した!」というラインが来るように、視聴者には結構なインパクトを与えています。

これは国外へのパフォーマンスでのアピールという側面に加えて、国内の人気を取る、という意味でも少なくない意味を持っています。

来年は大統領選挙がありますが、インドネシアではつい最近に来年の大統領選挙への立候補者の締め切りが行われました。

このタイミングで開催されるアジア大会にはジョコウィ政権もかなり力を入れていて、なんとしても成功に導いて、政権の実行能力を示す一端にしたい意向です。

そのために、ずっとデコボコだったジャカルタの目抜き通りのスディルマン通りが急速な勢いで整備されていままでなかった歩道が出来たり、パレンバンではLRT(都市旅客鉄道)も完成しました。

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いままでは考えられなかった歩道がスディルマン通りに出来た!

www.jakartashimbun.com

 

若い国民に向けたイメージ戦略
インドネシアは政治と国民の距離が日本より、とても近いです。

そして、インドネシアの人口は日本の約2倍の約2億5千万人ですが平均年齢は29歳。

平均年齢約45歳の日本と比べるとダントツに若い世代が膨大な人口を締めています。

ジョコウィ大統領もインスタやYoutubeなどを活用していますが、これは日本とは訴えなければいけない層が全然違うことに由来しているからだと考えられます。

今日(2018年8月20日)現在で、ジョコウィ大統領のYoutubeチャンネル登録者数は58万6730人、インスタはなんと1109万人のフォロワーを誇ります!

反して、日本で安倍総理Youtubeチャンネルを開設したりインスタでこまめに投稿したりしても若い世代で見る人はかなり限られるのではないでしょうか。

以下はジョコウィ大統領のYoutubeチャンネルで、子どもの質問に大統領が直接答えますコーナー。大統領が子どもの素朴な疑問に答えます。

中には漫画NARUTOについて大統領はどう思うか聞く子どももいます笑

このエピソードは252万回再生されており、人気ユーチューバーもびっくりの再生回数です。

www.youtube.com

上記の動画に見るように、子どもや若い世代に対してSNSを利用しながら、いい印象を与えることはもはやインドネシアの政治家には必須事項といえるでしょう。

2014年の大統領選や、昨年のジャカルタ州知事選でもFBなどのSNS政治勢力にかなり使われ、そこでの情報がその後の選挙の流れを決めていたといっても過言ではないです。

今回のアジア大会のバイクパフォーマンスは、単に海外向けに庶民派大統領を紹介するという対外的なイメージ戦略だけでなく、国内的にも特に若い世代を中心にイカした大統領だとの認識を再度植えつけることで、大統領選への前哨戦であるイメージ戦略を有利に進めようとする意識がバシバシ感じられました。

バイクの映像はいたるところで流され、それを元に若い世代の国民が勝手に写真や動画を加工してSNS上にアップしています。

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こんな絵が作成されて、インドネシアの力強さを表そうという人も

 

インドネシアで大人気の仮面ライダーのオープニング風に加工した映像。

www.instagram.com

 

インドネシアで大人気のK-POPとあわせた動画。

www.instagram.com

ちなみに韓国のツイッター検索ランキングでジョコウィ大統領のバイクパフォーマンスが検索1位になったとかでもインドネシアで話題に。

www.instagram.com

 

こういった画像や動画が、大統領のイメージアップに貢献してくれる。

まんまと大統領府やジョコウィ陣営の策略どおりの流れが、開会式後の数日は起きていたーーーそんな事を勝手に考えていました。

 そういった視点で以下の動画を見てもらうと、最初に感じた印象とは違う印象を持ち、動画から色々な意図も読み取れるのではないでしょうか。

www.youtube.com

 

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インドネシア映画紹介その1:Tabula Rasa

 

Tabula Rasa (2014年9月公開)

クマンにある独立系ミニシアターKinosaurusで7月に見た映画。You Tubeのトレイラーに惹かれて観たが、個人的には過去に見たインドネシア映画の中でも3本の指に入るくらいよかった(2018年7月現在)。一見、料理映画と紛えるくらい料理のシーンが多く、鑑賞後はインドネシア国民食のナシ・パダンをむしょうに食べたくなる。しかし内容はインドネシアの多様性を光と影両面から写した素晴らしい映画だ。

(トレイラーは下部にあります。)

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Tabula Rasaのポスター。左からハンツ、マック、ナスティール、パルマント

ストーリー

主人公のハンツ(Hans)は、パプア州セルイ島出身。サッカー選手を志し、才能に恵まれていたため、ジャカルタのサッカーチームにスカウトされる。近所の子どものヒーローとして、家族や大勢の人に見送られてパプアを飛び立つハンツ。

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パプアでのハンツ

次のシーンでは、ジャカルタの路上でホームレスの様な格好で、その日暮らしを送っているハンツの姿が映される。足を故障し、チームを解雇され、住まいもの確保も間々ならず電車の線路横で寝起きしするような毎日だった。

ある日、ハンツは自殺をしようと思い立ったのかどうか、線路を見下ろす陸橋に立っていた。自殺は出来ずじまいだったが、お腹を空かして陸橋で寝ていたハンツに声をかけ、家につれて帰ってくれる人が現れる。スマトラ島の名物料理ナシ・パダン(Nasi Padang)レストランを個人経営するマック(Mak)だ。

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マックは一食をハンツに与えたが、食べ終わったら出て行こうとするハンツを心配する。次の日の早朝、路上で寝ているハンツに声をかけ食材の買出しに誘うマック。その後、手伝ったことに対して、お金をせびろうとするハンツに出て行けと怒る場面もあるが、最後にはレストランのお手伝いとして家に住まうことを許可するマック。

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市場への買い物にハンツを同行させる

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一時は家から追い出すが

 

当初ハンツを住まわすことに難色を示していたウェイターのナスティール(Natsir)とは徐々に打ち解けるが、コックとして働いていたパルマント(Parmanto)はハンツを受け入れない。終いには、レストランの売り上げが上がらないこともあり、パルマントは出て行ってしまう。

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パルマントは言い争いの後、出て行ってしまう

 

人手が足りないことに窮したマックは、ハンツにナシ・パダンの調理法を教えることにする。当初は戸惑うハンツだったが、きちんとした仕事を与えられ、身なりも整い徐々に笑顔も増えてくる。料理をすることに、人の役にたつことに喜びを覚えるハンツとそれを見守るマック。

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そんな折、目の前に近代的で大きなナシ・パダンのレストランが新たにオープンする。そのレストランに対抗するためにハンツが出したアイデアが、ナシ・パダンではどちらかというとマイナーな魚の頭の煮込み料理(Gerai Kepala Ikan )を看板メニューにすることであった。それは、マックが最初にハンツを家に連れてきてご馳走した料理であり、マックが過去に亡くした息子の好物でもあった。

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魚の頭の煮込み料理(Gerai Kepala Ikan )

 

解説/感想

ジャカルタとパプアの距離感というと普通の日本人にはあまりピンとこないだろうが、両方ともインドネシアという一つの国に属している。ジャカルタパプア州都のジャヤプラまでは、直行便でも5時間強。距離では3700キロ程度で、東京~フィリピンの端っこである南部ミンダナオ島ダバオ、と同じ位の距離である。

マレーシアやシンガポールの方がジャカルタ市民には距離的にも、(特に若い教育を受けた世代は)感覚的に近い部分もあるぐらい、パプアは同じ国ながら遠い。パプア州は、2002年に成立し、インドネシアの一部に組み込まれた。(この下りはまたいつか記事にします)

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一方で、「ジャワ島の連中にうまい汁を吸われていて貧困率も高い。インドネシアから独立すべきだ」という思想の人も現在も一定数いて、自由パプア運動(インドネシア語: Organisasi Papua Merdeka, (OPM)として活動をしている。

ジャカルタから住む人間の感覚としては、同じ国だけど心理的にも物理的にも遠く、半分は違う国。そんな感覚が一般的じゃないだろうか。

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自由パプア運動支持者

ハンツはそんな遠くからジャカルタにサッカー選手の夢を追って出てきたのだ。お母さんの「そんな遠いところでなくパプアのチームで選手になれるんじゃない」という問いに、「ジャカルタのサッカーチームは様々な面で進んでいるし、そこで成功することが重要なんだ」というハンツの言葉に、日々の生活の中でジャカルタに対して、(特に経済的側面)で羨望の目を持っていたのが伺える。

また、ジャカルタのチームを怪我で解雇された際に「自分はごみの様に扱われた」というハンツの言葉にも、ジャカルタとパプアの距離を推し量ることが出来る。

そんなハンツがホームレス状態になり、窮している時に救いの手を差し伸べたのがマック。彼女も実は元々はスマトラ島パダン出身で、地震で息子を亡くし、再起をかけてジャカルタに出てきた身だった。

ハンツに料理方法を教え始めてから、マックとハンツの仲は心理的にとても近づいていく。それはハンツが最初はマックの事をIbu(年上の女性に対する敬意を持った呼称)と呼んでいたのに、料理を習い始めて少し経つとMa(Mamaの略称。本当のお母さんでなくても近しい間柄の場合使う事がある)と呼び始めることからも伺える。

明るいといえない過去を持った二人をジャカルタで結びつけたのは、インドネシア国民食とも言える人気を誇るナシ・パダンだった。

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ナシ・パダン

夢破れたインドネシア東端パプアの少年と地震で家族を失った過去を持つ西端のパダン人の夫人が、首都ジャカルタの地で国民的人気食のナシ・パダンを作る事を通して心を通わせ、お互いの傷を少し埋め合わせる。

インドネシアの国土の広大さとそれに伴う過酷な現状を映しながらも、多様な人々が交差しながら生きていく様子を描いている。

タイトルのTabula Rasaはラテン語で、「いかなる観念や原理も書き込まれていない白紙の状態」を表す。個々人は人種や宗教などの前に、一個人として白紙であり、原理的には同じものを共有している。そんなことを暗示しつつも、インドネシアの多様性をもある方向から写した、とても後味のいい映画だ。

星5つ ★★★★★

 

Producer:Sheila Timothy
Director:Adriyanto Dewo
Writer:Tumpal Tampubolon
Cast:Dewi IrawanJimmy KobogauYayu UnruOzzol Ramdan
Release date: Thursday, September 25 2014

 

参照

http://catalogue.filmindonesia.or.id/movie/title/lf-t010-14-039453_tabula-rasa

 


Tabula Rasa (2014) - Official Trailer - RILIS 25 SEPTEMBER 2014

 

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