印度尼西亜の面影~Kabar dari Indonesia~

インドネシア在住7年目。ジョグジャカルタ特別州のガジャマダ大学大学院所属のどまぐれモンによるブログです。インドネシアとは、文化とは社会とは。宗教とは。無駄に色々考えてます。

真夜中の黙想:愛国心

 インドネシアに住んで早5年7ヶ月。

早いもんで、こちらでの生活、文化規範などが自分の中でも内在化してます。

それに伴って、自分の中でのいわゆる愛国心もといい、望郷の念も強まってるのを感じます。

f:id:Jin20:20191119040812p:plain

愛国心=危ないもん?

日本での愛国心というと、最近のネット右翼に見られるような少々薄気味悪い物に、右寄りな耳障りを覚えるけど、本来は多くの人が持ってしかるべきものだとも外に住んでから感じるようになった。

 

日本の自国の自己定義が戦後で180度変わったのに伴い、こういう他国では見られないような感覚を「愛国心」という言葉に付随したものとして感じてしまうのだろう。(ネット右翼とか肯定してませんよ、もちろん)

 

大学で教えてる親父が日の丸君が代に対して否定的論議を提議する本を出したりしていた関係で、高校くらいまでは僕も愛国心や日の丸に関してはかなり否定的な感情を持っていた。学校での君が代斉唱とか歌わなかったな笑

 内在化している日本人という概念への敬意

ただ万世一系天皇系の臣民である日本国民という概念にはどうやっても同意できないし、国民国家は想像の共同体であることは明白だけど、それでも自分の出自を誇ることは否定されるべきものでなく、まして自己否定したくないと感じるようになった。

(*インドネシアに住めば、B.アンダーソンの「想像の共同体」(:東インド会社の統治した地域がインドネシアという国に変わっていく過程を参照に、ナショナリズム国民国家に関して書いた名著)が明らかにした、国民国家の概念が本当に理解できる。国民や国は人為的に想像されるものであると肌身で感じられる。)

f:id:Jin20:20191119033510j:plain

名著:想像の共同体


歴史を鑑みれば、自分の国を神格化することの怖さは、危険な思想につながることへの議論の余地はない。

 

ただ、自分の中で「日本人」である自分という概念がどのような文化的背景を持ち、どのように受け継がれて来たのか、どのように自分の中で内在化しているかについて思いを巡らせ、その歴史的な経緯に配慮した上でそれを覚悟をもって受け入れるべきだと考えるようになった。

 

世界の孤島であった日本が明治維新を大戦を契機にいわゆる大国にのしあがり、その過程でインドネシアを含む多くのアジアの人々に苦しみを与え、戦後はアメリカの犬になり下がり永続敗戦論の如く負け犬精神が多くの日本人の中に巣食っていてもである。

 こういう数年に渡る精神的な内面の過程を経て、僕は愛国心=自分は日本人という概念への敬意」を持つことが出来たと思う。それは如何に受け入れるのが苦い歴史的経緯であっても、受け入れることからしか始まらないという、少々悲観的見地から出発もしている。

 さて自分的愛国心の行方は

愛国心ができたからか、以前にも増して、自分の国である日本の様々な社会的課題に対して、少しでも貢献できる人材になりたいと感じる。

主には宗教や国籍を背景にした社会摩擦の緩和や多様性のある社会への貢献だろうか。それはインドネシアの学友などが、課題だらけの国でも自分の国を受け入れ、その上で政府や公的支援を待たずに、自分たちでアクションを起こそうとしているのを真横で見たからだろう。

修士課程で学びながら時間を捻出し、公的学校にまともに通えない子供への学校を運営したり、将来は絶対的に不足している精神的障害者の施設を作りたいと話す彼女の言葉には、自分を内省せざる終えない。

(友人の運営するinformal school)

相対化と概念の確立の繰り返し

インドネシアに住むだけでも、自分の中の概念を相対化し、比較検討する機会に恵まれる。そこから自分の中の絶対的と思っていた概念も相対化すれば絶対的ではありないこと学ぶ。一緒に学んでいるインドネシアの学友、彼らから学ぶことは本当に多い。

ただそれには、自分の目と頭と心を外に向けて開くことと同時に、自分とはなんぞやという概念の確立が求められる。その過程が、自分に愛国心を持たせてくれたと感じる。

 

すごい稀に日本に帰りたくなる時には日本の歌に救われる。

椎名林檎のNIPPONは2014年のW杯のテーマソングだけど、日本人としての自分という概念を持ちたい時に聞いたりしてる。

自分の出自に誇り持って、生きて行きたいです。そのためにも、グダグダな政治世界や問題だらけの日本社会に自分が日本以外で学んだ経験を還元し、少しでも貢献できる人材になろう。そう思います。


椎名林檎 - NIPPON